トロマの逆襲2013!

解説

“カルト・ムービー”として映画史に語り継がれる作品は数々あるが、その中で時代を超えて面白さを維持している映画は一握りだ。ロイド・カウフマン率いるトロマ・チームが総力を挙げて創りあげた、間違いなく<映画史上最も醜いヒーロー映画>『悪魔の毒々モンスター』は、その数少ない1本といえる。
 スポーツジムで清掃員をしているいじめられっ子メルヴィンが、不良グループの悪ふざけから有毒廃棄物のドラム缶に飛び込み、醜く変身を遂げて“毒々モンスター”となってしまう。“毒々モンスター”は悪に対する拒絶反応を持っており、掃除用のモップ片手にいじめっ子や不良、強盗、環境を破壊する悪徳市長まで、町のクズどもを次々と凄惨な方法で退治してヒーローとなり、美しい盲目の娘サラと結ばれる。

健康を求めてジムに集いながら麻薬売買や凶悪犯罪に手を染め、陰湿ないじめを楽しむ病んだ現代人、有毒廃棄物による環境破壊も金儲けにしようと企む強欲な悪徳企業家や政治家たち…。徹底的なエログロ&ナンセンスの中、今もまったく古びるどころか逆により深刻になっている社会問題をふんだんに盛り込み、強烈な風刺を込め、猛毒の見せ場の連続で描かれる“毒々モンスター”の痛快な大活躍。これは単なるカルトではなく、今こそ見るべき傑作である。

 84年に製作された本作はニューヨークのミッドナイト・ショーでのロングラン・ヒットをはじめ、フランスやドイツ、日本など世界各国で識者の顰蹙と若い観客たちの圧倒的支持を受けてカルト化し、大ヒットを記録。“毒々モンスター”はトロマのイメージを決定づけるマスコットにしてトレードマークとなって、トロマを世界的ブランドにまで押し上げることになった。日本ロケによる『悪魔の毒々モンスター東京へ行く』(88)、『悪魔の毒々モンスター3/毒々最後の誘惑』(89)、『悪魔の毒々モンスター/新世紀絶叫バトル』(00)という3本の続編が製作され、さらに『悪魔の毒々モンスター 毒々あにめいしょん』(91)としてTVアニメ化、オフブロードウェイでの舞台ミュージカル化、現在『ハイ・フィデリティ』(00)、『ナイト&デイ』(10)のスティーヴ・ピンク脚本・監督によるハリウッド・リメイクが進行中、カウフマン自身の手による5作目も製作準備中だ。

出演は、盲目のヒロイン、サラに現在ミュージシャンとして活躍しているアンドリー・マランダ。193cmの長身を活かして毒々モンスターを演じるのは、ケヴィン・スミス監督の『クラークス』(94)、シリーズ第4作『悪魔の毒々モンスター/新世紀絶叫バトル』(00)のミッチェル・コーエン。変身前のひ弱なメルヴィンを演じるのはカウフマンの前作『初体験物語 ファースト・ターン・オン』(83)のマーク・トーグル。彼は前作に引き続きこの映画でも記録係も兼任している。不良グループのワンダ役ジェニファー・バブティストとスラッグ役ロバート・プリチャードはこの映画の撮影終了後結婚し、共に『悪魔の毒々ハイスクール』(86 )に出演。同じくボゾ役のゲーリー・シュナイダー、市長役の巨漢俳優パット・ライアンも『悪魔の毒々ハイスクール』に出演している。また、『いとこのビニー』(92)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したマリサ・トメイが、ジムのロッカー・ルームで毒々モンスターに驚く絶叫演技で映画デビューを果たしているのも見逃がせない。

撮影はシリーズ2作目、3作目、『悪魔の毒々プラトーン』のジェームズ・ロンドン。編集は、本作に続いてトロマの『悪魔の毒々ハイスクール』(86)を監督するリチャード・W・ヘインズ。脚本は後にロジャー・コーマンの下で『渚のチャーリー』(88)などを監督するジョー・リッター。同じくキャスティングのブライアン・カットキンもコーマンの下で『エネミー・アクション』『シェイクダウン』などを撮ることになる。ピカソの絵画からインスピレーションを受け、毒々モンスターのグロテスクな造形を創造した特殊メイク・アーティストは『吐きだめの悪魔』のジェニファー・アスピナル。

日本では86年10月の東京国際ファンタスティック映画祭‘86で初上映され、87年1月15日に松竹富士の配給により松竹洋画系全国120館で一般劇場公開された。日本公開版は世界で最も長い92分の完全版だったが、残酷シーンはソラリゼーション処理が施され、スタンダードのフィルムの天地を切ってビスタサイズで上映された。今回は、16:9の中央にスタンダードサイズ全画面を収録したトロマ式ワイドスクリーン<トロマスコープ>によるデジタルリマスター&無修正完全版(92分)の世界初の劇場公開となる。

ストーリー

 ニュージャージー州のトロマヴィルは、悪徳市長が金のため有毒産業廃棄物や放射性物質を引き取っては不法投棄している荒廃した町だった。町のスポーツジムは不良や犯罪者の溜まり場となり、体を鍛えながらマリファナを吸い、不純異性交遊に興じながら、様々な凶悪犯罪の相談をする悪の巣窟となっていた。ジムの清掃員として働くドジで間抜けなメルヴィンは、見るからにひ弱で不良グループに馬鹿にされ、いつもいじめの標的となっていた。その日も不良たちは悪質ないたずらでメルヴィンを笑いものにし、彼は恥ずかしさのあまりジムの2階の窓から飛び降り、たまたま通りがかったトラックの荷台に積んであった有毒廃棄物のドラム缶に頭から突っ込んでしまう。やがてメルヴィンの体は炎に包まれ、その顔は醜く歪み、体はマッチョな巨漢へと変身を遂げていく。“毒々モンスター”となったメルヴィンには、“悪”を嗅ぎ付け、殲滅する本能が備わっていた。彼は日夜、トロマヴィルのパトロールを開始し、麻薬の密売人や強盗、不良グループたちを次々と凄惨な方法で退治して一躍町のヒーローとなっていく。さらに彼はファーストフード店で強盗に遭遇した美しい盲目の娘を救い、恋に落ちて一緒に暮らしはじめるのだった。一方、裏では麻薬密売人や凶悪犯たちの黒幕で、町の汚染も顧みずに有毒廃棄物を無尽蔵に受け入れ、私腹を肥やしていた市長は、トロマヴィルが安全で清潔な町になってしまうことを恐れ、モンスターを殺すための陰謀を巡らせるのだった。正義ために戦う“毒々モンスター”は、ある日クリーニング店である中年女をドライ・クリーニングの洗濯機に入れて殺してしまう。その女は売春組織の元締めだったが、市長はその事実を隠ぺいし、毒々モンスターを殺人容疑者として逮捕、殺害するため州兵に出動を要請した。町の市民が見守る中、毒々モンスターとサラの新居を戦車が取り囲んだ。果たして2人の運命やいかに…。

解説

『悪魔の毒々モンスター』『悪魔の毒々ハイスクール』シリーズの大成功を経て、トロマとロイド・カウフマンがたどりついた過激な下ネタとバカバカしさの限界点は、歌って踊る、陽気で下品な阿鼻叫喚のゾンビ・ミュージカル!徹底的なくだらなさがやがて愛と感動のクライマックスへとなだれこむトロマ40年の集大成ともいうべき空前の世紀末ナンセンス・スペクタクル!爆裂怒涛の最新傑作が待望の日本上陸!!

ネイティブ・アメリカンの墓地跡に建てられたフライドチキンのチェーン店アメリカン・チキン・バンカーで呪われたチキンを食べた人々が突如ゾンビ化、さらには巨大チキン・モンスターとなって暴れ出す。地獄と化した店内で童貞の接客係とレズビアンのガールフレンド、さらに自爆テロが趣味の過激派従業員たちが笑激のサバイバルを続け、人類の危機を救うべく歌って踊りながら壮絶な死闘を繰り広げる。

ロイド・カウフマンが巨大フランチャイズ・チェーンによる国際的なグローバリズムの悪夢を強烈に風刺し、過激派による自爆テロまでも笑い飛ばしながら、虐げられた者たちの怒りを最高級のエログロ・ナンセンスとパロディ、そして驚愕のミュージカル・ナンバーで謳いあげる、00年の『悪魔の毒々モンスター/新世紀絶叫バトル』(00)以来の長編監督最新作。自らも主人公の数十年後の姿として出演し、歌って踊り、銃を乱射し、モンスター化する大熱演を披露する。

全米公開時のオープニング週末興行成績(2008年5月8日公開)では『アイアンマン』に次ぐスクリーン・アベレージ($10,624)を記録、「エンターテインメント・ウィークリー」「ニューヨーク・タイムズ」「ニューヨーク・マガジン」「ザ・ガーディアン」「タイムアウト」などの主要媒体が、信じられないような絶賛評の数々を掲載、とてつもなくくだらないがラジカルな映画の魂を持ったトロマ映画の最高傑作として評価されている。
 近年のインディペンデント系ジャンル映画では珍しく撮影は全編35mmカメラで行われた。ロケ地は、ニューヨーク郊外バッファローの閉店したマクドナルド。300名を超えるエキストラだけでなく約80名のスタッフの多くも、トロマ映画に参加したいとインターネットで世界中から集められた無償ボランティアだった。中にはスウェーデン、ドイツ、オーストラリアから参加したスタッフもいた。

アービー(アービーズ)、ウェンディ(ウェンディーズ)、ミッキー(マクドナルド)、デニー(デニーズ)、パコ・ベル(タコ・ベル)など登場人物の名前の多くはアメリカにある人気ファーストフード・チェーンをもじったものとなっている。  共同脚本、共同製作、編集のガブリエル・フリードマンは『悪魔の毒々モンスター/新世紀絶叫バトル』など数々のトロマ作品を編集しているトロマの名編集マン。撮影のブレンダン・C・フリントも『トロメオとジュリエット』『悪魔の毒々モンスター/新世紀絶叫バトル』を手掛けているトロマの常連スタッフ。また、軽快なミュージカル・ナンバーの数々を提供したカナダのミュージシャン、ドギー・バナスもネットの募集を見てノーギャラで参加した。

 主人公アービーを演じるのはこれが映画初出演となるジェイソン・ヤチェニン。この後評判の高いホラー・オムニバス『V/H/S』(12)に出演している。ヒロインのウェンディを体当たりで演じるケイト・グラハムもこれが映画初出演。この後、TVムービー『CRIMINAL BEHAVIOR』(11)、『PRINCESS AND THE PONY』(11)などに出演している。ウェンディのレズビアンの恋人ミッキーには『QUEENS BOUND』(08)、『ASSISTED FISHING』(12)など数多くのインディペンデント映画に出演しているアリソン・セレボフ。また、『カブキマン』(90)、『トロメオとジュリエット』(96)、『悪魔の毒々モンスター/新世紀絶叫バトル』などトロマ作品になくてはならない巨漢ジョー・フライシェイカー、『TERROR FIRMER』以降、トロマ作品の常連となっている伝説のポルノ・スター、ロン・ジェレミーも出演、強烈な個性を見せている。

まったく関係ないが、学園を舞台に主人公たちが歌って踊る青春ミュージカル・シリーズ『GLEE/グリー』が全世界で大ヒットするのは本作品全米公開後のことである。

ストーリー

 ニュージャージーのトロマヴィル郊外。トロマホーク族の墓地跡にフライドチキンのチェーン店“アメリカン・チキン・バンカーズ”の新店舗がオープンした。
 オープン当日、店の前では先住民の神聖な土地で鶏を虐殺する企業の出店に反対するデモが行われていた。高校を卒業したばかりで無職のアービーは、そのデモにわけもわからず参加していたが、高校時代の最愛のガールフレンド、ウェンディが大学に入ってレズビアンに目覚め、さらに過激な動物愛護団体のメンバーとしてデモを主導しているのを見て腹を立て、“アメリカン・チキン・バンカーズ”の従業員に志願する。  アービーはスカート着用の販売嬢として採用されるが、異常なまでにスパルタ式の黒人店長が仕切るその店はゲイのメキシコ系調理係や自爆衝動を持つムスリム女性、トレーラー暮らしの獣姦趣味者など、奇妙な従業員ばかりが集まっていた。
やがて、どうにか店はオープンするが、先住民の呪いによって食材の卵が突然変異し、それを食べた客たちは次々と体調の異常を訴え始める。客たちは激しい嘔吐と下痢に襲われ、やがてゾンビやチキン・モンスターとなって他の者たちを襲って食べ始めた。
店内が阿鼻叫喚の地獄と化す中、アービーとウェンディ、その恋人ミッキー、さらにムスリム女性フムス、親とはぐれた幼い少女ら生き残った人間たちがサバイバルを繰り広げ、壮絶な死闘を続ける。そんな時、彼らの窮地を救うべく現れたのはアービーの数十年後の姿オールド・アービーだった。彼はマシンガンを手に鶏ゾンビたちを鮮やかに倒していくが、油断して襲われ、彼もまたアッという間にゾンビ化してしまう。
絶体絶命のアービーたち。このままではニュージャージーどころか人類が滅亡してしまう。果たして彼らが生き残り、世界を救う方法は残されているのだろうか…?

× close